メスの種牛 基礎牛
最後の(今のところ)口蹄疫発生から、1週間が経つ。奇跡的に再発が抑えられているのは、懸命なる消毒のたまもの。みなさん大変ご苦労さまです。それに皮肉にも、リングワクチン(と言うらしい)の効果は絶大である。それもそのはず、農家さんによる多大なるご協力と犠牲により達成できていることは、言うまでもないです。大変感謝しております。
しかし、そのワクチンで、種牛と同等、又はそれ以上の価値のあるものも犠牲となってしまいました。それは、基礎牛という牛で、種牛を育てるときに必要となる母牛、「メスの種牛」です。宮崎県下で93,000頭のメス牛から選抜されて、その超エリートの350頭が該当します。わたしのところのデータで、平成21年度に児湯地区に60頭リストアップされているようです。ここに入るには、その母牛から生まれた子牛が約30か月(2年半)で枝肉となり、その肉質が評価された結果で選抜されます。当然、その母牛に付けた種は、いづれも優秀な種牛のを付けているものばかりですので、この肉質を左右するのは母牛の能力によるものなのです。(当然も当然ですが、肥育農家さんの腕によるところでもあります。)母牛の能力があってこそ、そこに付ける種が活きてくる、そして優秀な子牛が生まれる。これが種牛、種雄牛です。家畜改良事業団さんでは、種雄牛を創るために、毎年この母牛に最も良い組み合わせを検討して付ける種を決定し指定されます。生まれた子牛がオスなら、種牛候補となります。あくまで候補!
その母牛が60頭いたということは、約60の農家さんは、種牛を創るための基礎牛の選抜をされている、超エリートな母牛を、リングワクチンの処置に同意して、殺処分されたということです。種牛により子牛が生まれ、畜産経済が成り立っているので、種牛ばかりが話題になり、貴重だ!残す必要がある!経済の基盤だ!と話題に上る。しかし、今回の口蹄疫で、根本的な傷跡を残していくのは、この「メスの種牛」の存在で、これも殺処分したということ。種雄牛は、どこかの誰かが言っていた、ストローで残っていく(ちょっと表現が冷たいな)。ですが、母牛のお腹は後世に残していけないのです。
この、「メスの種牛」の基礎牛を飼っていた農家さんは、それこそ断腸な思いでワクチンをうたれたことと思う。
« すずえ出産2010 | トップページ | 守りたかったものは、何ですか? »
「牛」カテゴリの記事
- 俵、さいや のセリ市でした。(2022.07.19)
- 試験交配牛(千尋135)の「箔」の買い上げ。(2022.05.13)
- くみん 、薪のセリ市(2022.04.21)
- かぼす のセリ市(2022.01.20)
- もんど の採卵2021(2021.10.14)
「口蹄疫」カテゴリの記事
- 宮崎県家畜改良事業団へ「安平王」を見に行く。(2017.04.03)
- 宮崎県家畜改良事業団 西米良種雄牛センターへ(2016.12.06)
- 口蹄疫から6年。(2016.04.20)
- BSE清浄国 と 口蹄疫清浄国(2013.05.30)
- 口蹄疫復興宝くじ発売、そして購入へ(2011.10.15)
「種雄牛」カテゴリの記事
- 俵、さいや のセリ市でした。(2022.07.19)
- 試験交配牛(千尋135)の「箔」の買い上げ。(2022.05.13)
- たかもり 卒業2018年1月17日(2018.02.14)
- 宮崎県家畜改良事業団へ「安平王」を見に行く。(2017.04.03)
- 忠富士のお墓へ(2016.12.07)
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
割りにこの頃ですが、児湯地区で殺処分された貴重な家畜の中には、種雄牛同等の貴重性を持つ種雌牛達が居たことを知りました。
確かに、「種牛」のことが話題にのぼるので、そちらのほうにばかり重要性が行きがちですが、優秀な母牛も居なければ、優秀な子牛は生まれない。
また、種雄牛同様に、優秀な母牛を育てることにも、時間と手間がかかっているはずです。
農水省は、「種牛保護の新ルール」に着手するそうなので、是非、その中に「優秀な母牛の保護」のことも盛り込んでいただきたいものです。
投稿: 瑛 | 2010年7月12日 (月) 17時55分
種雄牛がとても大切な存在だと今回の事でよく分かりました。
多分、農家の牛の事を知らなくても、競馬をやる人なら「種牛がとても大切ならメス牛もとても大事ではないか?」と感じたと思います。
福桜王と茂勝王のお母さん牛は元気でいるのかな?と心配していました。
瑛さんがおっしゃる通り優秀な母牛も種雄牛同様保護出来るようになれば良いですね。
投稿: | 2010年7月12日 (月) 21時07分
今回の悲しい口蹄疫で、宮崎の畜産農家の事や
茶畑日記で種牛や基礎牛など、
色々お勉強になりました。
有難うございます。
大切な大切な宝物ですね。
皆様の想いが届きますように。
投稿: びびあん | 2010年7月12日 (月) 23時29分
隣県が順次セリ市を開催することとなった。特に鹿児島の再開は正直うれしい。宮崎での防疫処置がほぼ確実化していることの確認が取れていることと、地元の経済をこれ以上止めておれないことによる、決断だと思う。日本の農家さんが、この疲弊した現状から少しでも立ち直ってほしい、そう願うばかりです。そして、順次隣県で再開し、軌道に乗れば、宮崎も再スタートが切れるきっかけになるので、頑張ってもらいたいと思う。
今回、メス牛について書きましたが、各サイトでメスの存在について質問とコメントが出ていました。ですが、今回は、リングワクチンという同じ条件の元にさらされている6頭との対比について書いてみたつもりです。
守りたいものは、地域経済であって、個々の牛ではないです。安全宣言を1日でも早く発表して、宮崎の復活をみたい。そして、みやざきVer,2をスタートさせたい。
投稿: kawabata49+1 | 2010年7月13日 (火) 00時15分
要は、サラブレッドと一緒ですね。
雄が優秀でも、母ちゃんが良くなければ・・・。
あと、雄と母ちゃんの組み合わせも大事ですが・・・。
個人的には、母ちゃん牛を守ってほしかったなぁ。
投稿: やっさん | 2010年7月16日 (金) 10時29分
今日は、なぜかコメントの気力が無い。
安堵感、罪悪感、達成感、無気力、不信感、希望、虚無、とっても大きな区切りになろうとしているのを、進行形で見ているので、どの言葉で書いていいのか分かりませんです。
みなさん、何か得るものありましたか?前進していますか?
これまでにあったことについて、後付けで理由を付けて、納得している、自分に言い聞かしている、そんな感じに思えてなりません。
こんなことでいいのかな?
投稿: kawabata49+1 | 2010年7月16日 (金) 23時56分