とても見ていられる状態ではありませんでした。
骨折箇所は、獣医師にて、止血の包帯とテープで固定していた。これ以上は何もできないということなので仕方がない。獣医が帰った後、ぶらぶらになった足の骨が当たって痛いのか、足を振り回す。血は飛び散り更にぶらぶらに。止血のテープも血で緩み、ほとんど外れてしまう。止血しているのは包帯のみ。それでもまだましの様子。
廃用が決まっていましたが、明朝まで手続きができない。共済の獣医師がTV電話で本所とやり取りして確認、そして廃用の決裁手続きとなる。その、本所の上司が時間外でいないという理由でした。どの道、搬出先も、手配できないので同じなのですが・・・。
結局、朝まで屋外ですごす。寒いのか、痛いのか、震えどうし。のこくずを大量に敷き、毛布をかける。朝から食べていないので、食欲はあるようで、食べさせると食べた。水も飲んだ。しばらくは落ち着いて横になる。産室の監視カメラを屋外へ設置し、常駐ではないが、遠隔で見れる体制にした。何かあれば、である。(山がすぐそばまで迫っており、血の匂いがするというのは少し怖い。山にライトを当てると光る目が見え、近寄るとたぬきで逃げて行った。)
しかし、じっとはしていない。横になってはいたので、もう立たないだろうと思っていたが、何故か起き上がる。とても歩ける状態ではないが、皆のいるところへ行って、使ってた飼槽に近づいていき、匂いを嗅いだり水を飲んだりする。ここでもいいと思ったが、バックができないことが分かった。皆の横ではダメである。そして動ける範囲を動いて、そこらじゅうの匂いを嗅いでいる。最後に確認しているのかな?・・・。左後足なので、左回りしかできないようだ。引いて介助しているうちに分かった。頭を上下に振るのは、片足のバランスをとるためだった。時機に分かった。寝ようと言っても、寝ない。30分は動き回る。そして、のこくずのところで崩れるように横になる。そして毛布、湯気、震え。こっちも離れ休む。寝れないが監視中ウトウト。画面を見てみると立ってるし、慌てて駆けつけ介助する。一晩中繰り返す。あとで気がついたが、小便をしていない。途中、少し出したところを見たがほんの少しだった。きっとできないのだろう。
明朝、他の牛にエサやりしていると、子牛がエサを残していた。よく考えたら床にのこくずを補充していない。忘れていた。床がいつになく湿っていた。寒かったので体調を崩したらしい。9時に獣医師、本所とやり取りして携帯で足と耳標を映し、決裁だそうだ。言っている間にまた立ちあがったのでトラックが着けるところまで移動した。獣医師はそこまでで帰った。あとはトラック待ち。そこから1時間以上待つが、その間、動き回るだけ動き回った。最後の力とばかりに。あっちこっち見て回った。足はその間振り回しているので、もう取れそうである。血は止まっていない。40分は動いたが、最後に崩れ倒れた。
やっとトラックが来て、立たせたいが無理のようす。荒いことはしたくないので、立ってほしいが無理だった。トラクターで寝たまま引っ張り、最後は寝たままトラックのウインチで引いた。もう足がどうなっているのかは分からない。引きずったところもどうなっているのか分からないが、もう何も言わずおとなしかった。でも、生きている証拠に頭を上げていた。無残だった。
正直、やっと行ってくれたとホッとした。骨折してから、「何でこよみが、」と、惜しいやら、悲しいやら、悔しいやら、いろいろな思いが頭の中を駆け巡る。走馬灯のように、過去の思い出がよみがえる。事故とは言え、防げなかった自分を責めた。その時の行動を思い出していた。一昨年、2頭の子牛を一度に亡くし、「もう我が家からは死なせない」と誓ったはずだった。でも、現にこうして防げず、足を骨折して横たわっているこよみを目の当たりにして、ココロが折れた。とても、見ていられる状態じゃなかった。トラックが出て行ったあとは、脱力感と落胆だけ残った。
夜になって、腹がへる。何とか食べる。
痛々しいです、角度が違うと。のこくずも赤くなってきます。
すぐ横に皆のいる部屋があるが、入れないので、屋外。屋根の有る無いで全然違う。
明け方、何度も動き回っているので大分疲れている様子。痛いのかどうかも分からない。
獣医の確認が終わったので、うながされてトラックの出入りできる所へ無理やり移動。毛布は湿って重かったので外せばよかった。
出てきたはいいが、エサを食べる。後足が・・・。この後、運動場を何周も見て回った。そして力尽きた。
我が家を出て行ったのは、もう11時頃だった。
===これ以降は、その日の午後、他の牛の行動です。===
牛舎内も落ち着きが無いので、いつも通り運動場へ。そしたら、出ていくなり、鳴き叫ぶものや、地面や柵や、コンクリートの壁等を匂ったり、舐めたりしているので、興味深く動画にしました。柵の蝶つがいの隙間には、抜けた毛や血が付いていて、分かるのでしょう。柵などにも、最後に運動場を周った際に足を振り回していたので飛び散った血があちこちについています。こよみの存在を探しているのだと思いますけど、いなくなったのが分かっているのでしょう。牛たちの仲間意識に、涙が出た。
他の牛を運動場に出してあげた。皆、声をあげて鳴いている。呼んでるのか、探しているのか。そして、ここの柵で3頭が匂っているところに足を挟みました。匂いが残っているのでしょう。
柵の周りには飛び散った血が付いていて、しきりに匂っています。
コンクリートの壁面にも血の跡が。名残惜しんでいるようです。
私も、3日目にして、やっと安定してきました。最終的には廃用で出すことになるのは同じなのですが、繁殖の雌牛には、生まれたときから見ていて、性格も分かって、癖も理解して、共に生活しているようなものなので、特段の思い入れがあります。それを突然断ち切られるのには、衝撃と落胆が大きく、その穴を埋めるには、しばらく時間がかかるようです。
また、事故の無いよう、対策を打って、前向きに牛飼いして行かないとと、思った次第です。ご心配おかけしました。
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