凍結保存容器(LN2液化窒素用ボンベ)
通称「ボンベ」
牛の繁殖子牛生産の現場においては無くてはならない物です。
中には種雄牛の精液がストローに充填され、液体窒素で凍結保存されています。
また、母牛から採取した受精卵を保存するのにも使用されます。
中には液化窒素が充填され、温度はマイナス196℃(-195.8℃)になります。
というか、正確には沸点がこの温度なので、これ以上の温度の物や空気に触れると蒸発(気化)してしまいます。
蒸発(気化)すると、646倍(0℃)に膨張するようです。
温度で気を付けないといけないのは凍傷。
蒸発することで気を付けなければいけないのは酸欠。密閉した部屋や車の中だと、転倒した場合に急激に室内の空気が窒素に置換され酸欠になります。
それと、膨張することで気を付けなければいけないのは、ボンベの破裂(爆発)。ボンベ内でも常に蒸発しているので、ボンベ自体を完全に密閉してしまうことは大変キケンです。
そんなボンベ、昨年(2017)購入しました。
メーカーも種類もいろいろあります。
私は、クライオワンのDR-17という製品にしました。
選定の基準となる項目には色々ありますが、以下のものが主になるのではないでしょうか。
(1)収納本数
(2)再充填期間
ですかね。
(1)収納本数(DR-17の場合)
精液ストロー0.5ccが600本、または0.25cc(受精卵用)が1140本となっています。
収納にはキャニスターという筒状の容器があって、そこにストローを入れます。
そのキャニスターが6本セットできるようになっています。
なので、0.5ccのストローなら一つのキャニスターに100本入る計算です。
ですが、そのキャニスターには更に4区画に分ける仕切りをオプションで入れることができます(写真)。そうなるとこの本数は無理かもしれないですね。
因みに、このキャニスター、底穴有と無しがあるそうで、私は穴無しにしました。
引き上げたときに液化窒素に浸かったままか、そうでないかの違いになります。
確かに浸かったままだと見にくいんですけど、安心感がありますね。
(2)再充填期間
これは、購入後のメンテナンスに大きく影響します。
ある人は毎月充填日を決めてるとか。
ある人は気がついたら空っぽ寸前だったとか。
液化窒素は常に沸騰(気化)していますので、何もしなくても、全く開けなくても、自然に無くなっていきます。
私のDR-17の場合は、
再充填期間:59日となっています。約2か月は入れなくていいのかな?
これ以外に、保持日数があって
保持日数:95日となっています。空になるのに3ヶ月ってこと?
取扱説明書では、容器の全内容量の1/3~1/4に減った時に再充填するのが望ましい、と書かれています。
じゃあ、どうやって測るの?と言ったら、専用のゲージが付いています。
ただのプラスチック製の物差しですが、これを底に着くまでゆっくり差し込み、10秒ほどで出します。すると、液化窒素に浸かった部分のみに霜が付いて底からの残量が分かります。
満杯時の液量が31.4cm
1/3残容量時が10.5cm
1/4残容量時が7.9cm
なので、10cmを下回ったら要注意、8cmを下回ったらレッドラインといったところが、運用基準でしょうかね。
因みに、僅かでも残っていれば内部温度は-180℃に保たれるそうです。
しかし、ホントに残量0の場合、10数時間で-100℃に達し、更に上昇し続けるそうです。
で、実際1年間運用してみた結果は以下の通りです。
初回の充填をして以降、8回再充填しています。
8/22 初回充填量20.3ℓ、金額5,480円
~8/27 370日、総充填量73.9ℓ、再充填金額19,930円
となり、一年間で2万円のメンテナンス代がいることが分かります。
1日の損失量を計算してみると、0.2ℓ(0.1997ℓ)になります。
全て無くなるには、101日になりますので、保持日数95日通りですね。
気になるのは、夏場と冬場での損失量に違いがあるのかですが、表を見ると、
夏場は、0.21ℓ/日、56円/日
春秋は、0.20ℓ/日、54円/日
冬場は、0.19ℓ/日、52円/日で、若干の違いでしょうか。
夏-冬の差が4円程なので、一月で120円の差ですね。
液化窒素を充填してくれる会社の人に、「損失減らす方法ないですかね?」って
聞いてみると、即答で「無い!」って言われました。
計算してみると若干の差は出ますが、-196℃からすると夏冬の気温の差なんて大したことないので、損失量を減らすなんで難しいようです。
ただ、米の保冷庫のような涼しいところに置いておくのは、いいかもしれないですね。
手間ですけどw
少しお高いですが、ここのメーカーにはSRのシリーズもあって、断熱の違いがあり、損失量を半分近くにするものもあるようです。
トータル的なランニングコストを考えると、こちらの方がいいのかもしれないですね。
但し、再充填期間が長いと言う事は、充填するのを忘れる、と言う事もありますので、注意が必要ですね。
と言う事で、ボンベについて書いてみました。
これ以外にも、種類のいろいろとか、輸送方法とか、盗難防止とか、ボンベにまつわることは色々ありますが、また気になったら書いてみたいと思います。
私もそうでしたが、まだ持っていない人には未知の世界ですし、中がどうなっているのかも簡単に見れるものでもないです。
液化窒素を充填する前の写真も添付してますので、参考にして頂ければと思います。
新品のボンベですね~外回りの布のようなものは保護用です。
6本のハンドルがあり、その下にキャニスターがあります。
普段は覗けないですね。底の真ん中に丸い突起が出てます。
その脇にキャニスターが並びます。お互いが当たらないようにですね。
6本均等に並んでます。うまく脇に寄せないとキレイに入らないですね。
これが仕切り板。一応ホプションのようです。
これをキャニスターの筒に入れます。
1~4までの穴が開いていて、蓋になっています。
これがゲージです。これをゆっくりと底に着くまで差し込みます。
急いで入れると無駄に蒸発してしまいます。
底に着いたところ。ゆっくり引き上げます。
最初は全体白くなっていますが、少し間を置くと浸かったとこだけに霜が残ります。
私は必ず記録を残して、いつでも見られるようにしてます。
年間2万円のメンテナンス料が要ります。
もし怠ると、これでは済まなくなりますね。
色分けは、夏が桃色、春秋が緑、水色が冬です。
カタログデータですね。大きさも本数もいろいろです。
損失量0.183ℓ/日なので、若干多く損失してます。僅かですが。
なるべく1/4は下回らないようにしたいですね。
最近のコメント